将棋という競技は論理と論理のぶつかり合いです。
自分はこういう手を指す、なぜならこうこうこういう理由があるからである。
そしてこれに対して相手はこうくるだろうから、
そこで自分はこの手を指して…とひたすらロジックを組み立てていきます。
これを集中して繰り返していく事により論理的思考能力が向上し、
それが数学や理科の勉強でも役に立っていきます。
また、手を読んでいく途中でほぼ毎回「場合分け」を考えなくてはなりません。
「ここは絶対にこの一手」という局面はかなり少なく、
ほとんどの局面では指し手の選択肢が多数あり、
その都度それらを場合分けして考えなければならないのです。
つまり具体的にどういう事かといいますと
「この局面では①ここの歩を動かす②この金を引く③…のどれにしようか」
と考え、それぞれの手に対して相手の出方を考え、
さらにそれに対して自分の手を考え…と繰り返していき、
それらを一つ一つ自分が有利になるのか不利になるのか、あるいは五分五分なのかを場合分けして考えていくのです。
場合分けは数学において中学生レベルの問題であり、
小学生にとってはかなり難易度が高いと思います。
しかし、将棋を指す事により常に場合分けを考えるため、自然とこのような力が身についてきます。
勿論、この場合分けをするうえでも、正確な読みと論理的に形勢を判断する力が必要であり、
これらの相乗効果で論理的思考能力をますます高める事が出来ます。
さらに、論理を展開しながら手を指していく中で、相手が自分の読みに全くない手を指してきたりもします。
それがもし良い手だったとすると「なるほど!こんな手があるのか」と自分の論理の甘さを痛感させられます。
しかし、もしこれにより勝負に負けたとしても、優れた論理を対局中に自然と吸収しているため、結果的に論理的思考能力の向上につながっていきます。
前述の日本将棋連盟のアンケートでもプロ棋士126人中、小学生時代の算数の成績が五段階評価で5だった人が75人、4だった人が31人回答しており、8割以上のプロ棋士が算数を得意として
いた事が分かります。
しかし多くのプロ棋士が小学生時代算数を得意としていた一方で、現代社会を見てみると、今の日本では算数を得意としている子供の数は多いとは言えず、むしろ学生の理科離れが大きな問題となっています。
理系の学生数が減ってしまうと、自ずと技術者の数も少なくなってしまい、現時点でも既にIT業界ではシステムエンジニアの数が不足しています。また技術職に限らず、企業は論理的に物事を考えられる理系の学生を重宝している傾向にあります。
理系不足になってしまう要因の一つとして、学校教育における算数や数学は、一度つまずいてしまうとその先も分からなくなってしまう事が挙げられます。
さらにそこで問題となるのが、つまずいてしまいそこで「自分で考える事をやめてしまう」事だと思います。
そうするとますます算数や数学が分からなくなっていき、気付いた時には授業に全くついていけないという状況に陥ってしまいます。
しかし、将棋により論理的思考能力の高い学生がたくさん育てば、仮に勉強していく中でつまずいたとしても、普段から論理的に考えるという行為をしているため、考える事をやめずにそこから立ち直れると思います。
私自身も小学生の頃、一番得意としていた科目は算数でした。しかし、中学生の時に因数分解でつまずいてしまい苦労しましたが、そこで考える事をやめなかったため、数学を得意科目とする事が出来ました。
子供達に将棋を教える事により、日本全体において数学の得意な学生がたくさん育っていく可能性は十分にあると思います。そうなれば、日本の抱えている理科離れ及び技術者不足という深刻な社会問題を、将来的に解決していくのではないでしょうか。
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